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【読観小評:映画】 エノーラ・ホームズの事件簿

 本を読むこととテレビで洋画を観るのが好きな子供でしたが、いい年になってからマンガとアニメに目覚め、今ではジャンルや嗜好に偏りはありますが、何でもござれです。

 読み漁る、観漁るスタイルなので、タイトルに評とあるものの評論なんて大層なことは書けません。気になったものについて勝手に綴っていくつもりですが、興味をもっていただけたら嬉しいです。

思いが強い作品は熱くなってネタバレするかもしれないのでご注意ください。

 

今回の作品は

 

エノーラ・ホームズの事件簿   2020年   NETFLIX

 

 配信動画を漁っていて少し前に見つけて気になっていましたが、その時は短いものを探していたので、映画である本作はアップされてからしばらく経ってようやく見ることができたものです。まったく余談なのですが、この記事を書くにあたって記憶をはっきりさせるためにウィキペディアを検索したら配信日が2020年9月23日となっていて、自分の誕生日と一緒なので縁を感じています。

 

 本作はNETFLIXオリジナル映画として配信されていますが、製作はワーナー・ブラザースで、新型コロナウイルスの影響で劇場公開を断念したところNETFLIXが配信権を獲得したとのことです。

 本作はシャーロック・ホームズの妹が主人公のお話ですが、シャーロック・ホームズシリーズの原作者アーサー・コナン・ドイル氏のものではなく、アメリカの作家ナンシー・スプリンガーさんの創作で、主人公のエノーラ・ホームズも本作での創作の人物です。模倣作やパロディー作品というものはよくありますが、オリジナルの印象が強ければそれを超える作品というのはあまり記憶にありません。なので本作も気にはなっていましたが本音は期待と不安が半々という感じでした。

 

 エノーラを演じた役者さんはミリー・ボビー・ブラウンNETFLIX配信の「ストレンジャー・シングス」に出演していたので見覚えがありました。そのステレンジャー・シングスのイレブンを演じていくつかの賞を受けたようです。端正な顔立ちで知的な雰囲気を持って、アクションもカッコよくてまさにエノーラにうってつけです。

 

 母のユードリアはヘレナ・ボナム=カーターです。いろいろ作品に出演されて賞も取っているのですが、印象に残っているのは「ハリー・ポッターと白鳥の騎士団」で演じた「ベラ」ことベラトリックス・ベストレンジです。エキセントリックなメイクと振る舞いで、シリウス・ブラックを倒してしまったアイツです。あの当時と比べるとさすがに月日が経ったことを感じますが、あの何かやらかしてくれそうな雰囲気は健在で、母ユードリアの言動を見るとやはりエノーラと同様この人がぴったりの印象です。

でもこの人がエノーラの母だと言えばなるほどと思いますが、マイクロフトとシャーロックの母だということはちょっと想像できません(笑)。

 

 シャーロックはなんとスーパーマンバットマンvsスーパーマンヘンリー・カヴィルです。さすがに体格よすぎです。いくらシャーロックがボクシングなど嗜み体を鍛えている設定とは言ってもさすがにごつい。立ち姿、歩く姿ではスーツがはち切れんばかりで周りを圧倒する体格です。でも顔とか立居振舞が、見ているうちにシャーロックそのものと感じられて流石です。

 

 他、マイクロフトや寄宿学校の校長先生もよく見る役者さんで、良いキャストで固めてるという印象です。寄宿学校の校長先生は、ハリー・ポッターの伯母の役者さんだということを付け加えておきます。知っていると何だか通じるキャラだなと感じられるかもしれません。

 

 エノーラはイギリスの郊外で母と二人暮らしで、学校にも通わず母から色々な教育を受けていました。推理(パズル)や格闘技は教わりましたが淑女の嗜みなどは全く身についておらず、これが後にマイクロフトの怒りを買うことになるのですが。

 お話は、この二人暮らしの母が失踪したところから動きはじめます。

 

 母が失踪した話を受けて、マイクロフトとシャーロックがエノーラを訪ねます。マイクロフトはエノーラの生活態度や教育状態を見て将来を悲観し、エノーラを寄宿学校に入れようとします。

 それを嫌がったエノーラは変装して逃亡を図ります。逃亡で乗った汽車の中でやはり追われているバジルウェザー・テュークスベリ侯爵と出会い、公爵の逃亡劇に巻き込まれてしまいます。追手から逃れるために汽車から飛び降りるなどして難を逃れた二人はロンドンまで行ったところで別れ、エノーラはそこで母を探しはじめます。

 ロンドンでエノーラはバジルウェザーと会い、彼を逃がすことには成功したもののエノーラはマイクロフトに捕まり寄宿学校に入れられてしまいます。その後寄宿学校から脱出して謎を解きながら核心に迫っていく。

 たび重なるピンチをエノーラの大胆な行動と度胸、卓越した推理力で切り抜ける。まさにどんでん返しの連続。エノーラの運命やいかに!

 

 スリリングでテンポの良い展開の他に、この映画ではちょっと変わった演出もされています。

 一つは、エノーラがこちらに向かって語りかけてくること。コメディーや漫画では「どこに向かって話してるんだよ!」とツッコミが入るシーンですが、この映画では終始エノーラが話しかけてきます。映画ではあまり記憶にない手法ですが、シャーロックにとってのワトソンとか、エルキュール・ポアロにとってのヘイスティングとか、そういう語り部がいない代わりに観客に話しかけているかのようです。エノーラの破天荒な言動からすればこの変わった手法も普通のことのように受け入れ、話しかけられた分それぞれの探偵の相棒であるかのように引き込まれていきます。

 もう一つは幕間にサイレント映画の台詞のように画面維持が出て来ること。普通はテロップ調であったりしますが、時代背景を意識したような巻き紙に書かれた文字。古い映画では「スティング」も場面が切り替わる時にこのような表現があったかと思います。まあ「スティング」が好きな映画なのでここが気になっただけかもしれませんが、気になってしまうとおしゃれに感じてしまいました。

 

 見る前に感じた、期待とちょっとの不安でしたが、ストーリーも映像も期待を裏切ることなく楽しく素敵な映画になっていました。原作小説はシリーズのようなので、この映画も続編に期待したいくらいの満足でした。

 

 ネタバレをしないように感想を書こうとするとやはり文としてはまとまりに欠け、自分の未熟を恥じるばかりです。思いが書き残せたかは甚だ不安ですが、取り繕おうとして傷を深める前に終わりたいと思います。

 

最後の言葉は、かつて映画評論家の水野晴郎さんがテレビ映画のエンディングでのご挨拶。

「映画って本当に良いもんですね。ではまたご一緒に楽しみましょう」

 

追)水野晴郎さんの「映画って本当に・・・」の名台詞には3種類ほどあって、映画のお気に入り度で台詞を変えていたという話があります。ジャンルによって変えていたという話を聞いたこともあります。ここではお気に入り度(そもそも誰の?)ということは気にしないでご挨拶とさせていただきました。意図も知らずにパクリ?という批判がもしかしたらあるかもしれませんが、とても分かりやすい解説で好きな評論家の先生へのリスペクトとして締めのご挨拶に使わせていただきました。