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【読観小評:映画】オリエント急行殺人事件

本を読むこととテレビで洋画を観るのが好きな子供でしたが、いい年になってからマンガとアニメに広がって、今ではジャンルや嗜好に偏りはありますが、何でもござれという状況です。

読み漁る、観漁るスタイルなので、タイトルに評とありますが評論なんて大層なことは書けません。気になったものについて勝手に綴っていくつもりですが、興味をもっていただけたら嬉しいです。

思いが強い作品は熱くなってネタバレするかもしれないのでご注意ください。

 

今回語りたい映画は

 

アガサ・クリスティー  オリエント急行殺人事件 2017年

 

これは以前に映画化されていますし、私は原作(もちろん翻訳版ですが)も読んでいるので、はじめはあまり気乗りしていなかったのですが、ジョニー・デップがキャスティングされていると聞いてネット配信で観てみたものです。

 

結論から言うと「素晴らしい」と言って良い作品だと思いました。小説も映画も、内容が分かっているのに何回も読んだり観たりしたのですが、それでも今回の映画は絶妙にアレンジされていて、元を知っているからこそ裏切られた、という感じもあり、あれ?あれ?こんなじゃないよな?なんて思いながら引き込まれていました。

 

ネタバレしちゃいけないと思いつつ、まあ有名な話ですし、本作品も公開されてから年数も経っているので言いたいこと言ってしまおうと思います。

 

クリスティー作品の映画化の印象は、旅先で起きる事件を扱う印象なので、映画としては当然ですが映像が美しい。初めて観たクリスティー映画は1978年に公開された「ナイル殺人事件」ですが、ナイル川周辺の景色や遺跡が陽の光を浴びスクリーンいっぱいに広がる素晴らしいものでした。光だけでなく影の魅力や、砂や埃まで感じられ、当時は子供でありながら現地は然もありなんと圧倒された記憶です。

 

オリエント急行殺人事件の方は事件は閉ざされた列車内で起きているので、ふんだんな景色ということはありませんでしたが、冒頭のイスタンブールの景色、走り出したオリエント急行のまわりの景色は広がり、深みともに素晴らしく、映像を作られた方々への敬意が止みません。

 

そんな中走り出したオリエント急行ですが、まあポアロが乗り込む経緯とかそこでどんな扱いだったかとか、いろいろエピソードはありますがそれこそ細かい話になるのでそこはネタバレを言い訳に割愛します。実際に伏線になる話もありますので。

ただ、原作にも前作の映画にも無かった、まだ乗車前のシーンから続くポアロが細かいことにこだわるところ、尊大な態度などの表現がまた面白い。ポアロ役のケネス・ブラナーさんは立ち居振る舞いが原作を思い起こさせるには十分で、素敵なポアロだったと思います。

原作のポアロは「足をちょっと引きずった卵型の黒髪の頭の小男」と言う表現なので、実は体型は残念ながら合っていません。177㎝の身長はどう考えても小男ではありませんから。そう考えるとポアロ役としてはテレビシリーズのデビット・スーシェ さんが最も原作イメージに近かったのかなと思います。とは言ってもデビット・スーシェさんも170㎝あったそうなので小男ではありませんが、少し猫背で身長は?などと考えさせないくらいの小男ぶりでした。

それに比べると今作のケネス・ブラナーさんは背筋も伸びていますし小ささは感じられませんでした。だからと言って身長ほどの大柄にも感じられなかったのは、「あぁポアロってこういう感じだよね」と思わせる演技のおかげだったのではないでしょうか。黒髪でも無かったですが、そこは白髪混じりか?というくらいに見れました、というのは蛇足的発言です。

 

キャストでいうと、今回きっかけになったジョニー・デップさん。どう考えてもポアロのタイプじゃないので主役ではないと承知はしていましたが、実際すごく重要な主要人物の役ではありましたが、なかなか無駄遣いではないか?という役です。ただ風貌も雰囲気もぴったりの役ではあったのでさすがです。なんで無駄遣いかというと確実にネタバレになるので、今回はネタバレしない保証はないものの、出来るだけネタバレしないで書こうと思っているのでここで止めます。もしこれを読んで気になった方は是非映画をみてください。

 

ストーリーを語らない縛りで感想を書いてきたので、なんだか背景とか勝手な想いばかりを綴ってしまった感はありますが、ここだけは。

原作も前作も事件は雪に閉ざされた列車内で起こったことで、客車から出ることができない密室状態というのが前提でした。

今作は雪崩によって機関車が脱線したために立ち往生という設定になっています。

なので人々は外に出ることができます。片面は断崖絶壁で目の前はトンネルですが雪崩なので事件当時は密室状態ということは変わらないということです。原作では雪を掘る作業員待ちでしたがここでは脱線を修復する作業員が来ます。

作業員が来てトンネル内にテーブルやストーブがあって、操作(聞き込み)も車内だけでなく風に当たったりトンネルの中でストーブにあたって行われたりします。

そのために原作とはちょっと違ったトリックの解明や、トンネルに出れるからこその素敵な絵面が登場します。元ネタは見ればすぐにわかるのでやはりこれ以上を書く訳にはいきませんが、原作といろいろ変わってしまってどうするんだろうと、訝しみながら見ている者にとっても楽しめる映像になっています。

 

原作は有名な作品であり、すでに映画化もされて、でもそれを知った人でも楽しめる者になっていることは間違いありません。原作、前作と違っている分、この先どうなるんだろう?と考えながら見ることもできます。リメイクなのでそこもあえて狙ったのかもしれませんが。

公開当時なら、まして劇場公開でパンフレットなど見ればそういう背景もわかリ得たのでしょうが、むしろそういう先入観を持たずにドキドキしたのも観終わった後の感想としては「楽しめた」ことに間違いはありません。

 

内容を語らず、脱線ばかりして、また文章も稚拙で思いが伝わるのか不安しかありませんが、この映画は、美しい映像好き、推理もの好きの人たちには、そういう人はすでに観ているのでしょうが、私のように見逃した人には是非観てもらいたい作品です。

そして「ナイル殺人事件」2020年版にも大いに期待しましょう。